周囲の無理解がうつ病を悪化させている

周囲の人々のなかには、本人が病気であることすら認めず、「怠け者」扱いをすることがあります。このため、うつ病におちいった人たちは、自分が「怠け者」視されていることを気にして、少ないエネルギーをさらに消費し、ますますうつ病を悪化させる結果となります。
このような悪循環におちいってしまうケースは実に多いものです。
患者さんの家族からよく言われることに、「じっと寝かせておくと、かえって体がだめになってしまうのでもっと運動をさせてもいいでしょうか」「無理をしてでも外の散歩に出させてみては」「朝、起きられないとまずいので、きちんと起こすようにしたら」「旅行に連れていって少し元気を出させてみたいのですが」などという質問があります。これらはいずれも周囲の人々の、うつ病という病気に対する無理解と無知から生じた言葉といえます。

休養の必要性

うつ病をローソクの火にたとえると、「ローソクの火があと少しで燃えつきようとしている状態」ということができます。あるいは、この病気を自動車にたとえてみると、今まで順調に走っていたのが急に動かなくなったような状態なのです。
病院での検査は、どこに故障が起きたものかを調べることにあります。ところが、修理工場に出して点検をすると、部品や車体にはまったく異常がないという結果が得られ、よくよく調べてみると、動かない原因はガソリンが不足した状態だと考えてください。
そこで、ガソリンを補給さえすれば、自動車は円滑に走ることができることになります。
うつ病の治療にあてはめると、少なくなったエネルギーを使うのではなく、エネルギーを蓄えることを主眼とした方法をとる必要があるというわけです。
エネルギーを蓄えるには「栄養」と「休養」が重要となります。したがって、これ以上エネルギーを消費する「運動」は、してはならないことになります。
一言でいえば、うつ病の人には、周囲の理解と十分な休養が、病気を治す重要なポイントになるのです。