国際化時代、海外旅行者や輸入食品は年々増加しています。
それに伴い我が国に存在しない海外の感染症が、侵入する危険性が増大しています。
輸入感染症
検疫所の業務としては、海外感染症の我が国への侵入防止、予防があげられます。
法律で検疫の対象になっているものは、コレラ、ペスト、黄熱およびエボラ出血熱・マールブルグ病・ラッサ熱・クリミヤ・コンゴ出血熱といったウイルス性出血熱です。
これらの感染症流行地域を旅行した人やそれらの国々から飛んできた航空機に搭乗した旅行者は、我が国に入国の際、検疫ブースにて「質問票」を提出していただくことになります。感染に伴う発熱、下痢、腹痛がある場合には、すぐ検査をして、一部は入国手続きをしている間に検査結果が出るようにしています。
その他、ごく最近大きな問題になっている新型肺炎「SARS」(重症急性呼吸器症候群)もこれに準じた扱いが必要です。
中国・広東省や香港に端を発し、全世界に広がりつつあるこの病気は、感染力が強く進行も早く、通常の予防法では感染は防げないと、WHOは異例の緊急警告を発しました。
その症状
38度以上の急な発熱、咳(せき)、息切れ、呼吸困難といった症状が出、インフルエンザに似ています。しかし、普通なら肺炎に効果がある抗生物質やインフルエンザ治療薬が効かないという特徴があります。
原因とみられるのが新種のコロナウイルスである可能性が極めて高いとオランダ・エラスムス大学研究グループが動物実験で確かめ、また、アメリカ疾病対策センターの研究者等も新種のコロナウイルスを特定したと発表しています。これをWHOは、「SARSウイルス」と命名しました。
完全な治療法がない現在、予防策としてはあまり期待はできませんが、マスクの着用、手洗いの励行や、さらに、これに対するワクチンが開発されるまでいまだ時間がかかるわけですから、海外からの帰国者は、前述の症状が出た場合は、この病気を広がらせないためにも、直ちに保健所等の相談窓口に連絡し、指定の病院に直行してください。