皆さんは「呑酸(どんさん)」という言葉をご存知でしょうか。胃内容物の食道への逆流が頻繁に起こるようになると、胃液の酸のために胸やけや口の中まですっぱい水が上がるように感じます。これが呑酸です。中には狭心症とまぎらわしい胸の痛みが起こることもあります。
逆流症状の他、食道粘膜がただれて食道炎が起こります。症状があっても食道炎がなかったり、食道炎があっても症状が軽いこともあるので、逆流による症状あるいは食道炎のどちらかがあればGERDと診断します。
副鼻腔炎(ふくびくうえん)や咽頭炎(いんとうえん)、慢性咳嗽(まんせいがいそう)(長引く咳)といった、単純には胃液逆流のせいとは考えにくいさまざまな症状が起こることもあります。
内視鏡で食道炎が認められるものを「逆流性食道炎」、ひどい胸やけがあるものの内視鏡で食道炎が確認できないものを「NERD」と呼びます。GERDは逆流性食道炎とNERDを合わせたものです。
胃酸逆流の原因には、生活習慣(食べ過ぎ・早食い・高脂肪食・アルコール・喫煙・食べてすぐ寝る等)や体型等の身体的状況の問題(前かがみ姿勢・肥満等)があります。
GERDと言われたら、①飲酒と喫煙量を減らす②高脂肪食・大食・早食いを控える③食品の中で「胸やけ」等の症状がつらくて困ったことのある食品を避ける、といった食事療法が効果的です。これらは一般的な生活習慣病の予防にも共通する事項です。壮年男性で喫煙・飲酒量の多い人は、食道がんの危険群でもあります。
GERDの治療は、逆流を止めるか、逆流しても酸を弱めるかのいずれかになります。内服薬で効果的なものは、胃酸の分泌を抑える方法です。中でも、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる薬が最も効果的です。この他、酸を中和したり酸による刺激を弱める薬剤を使ったり、逆流を起こしにくくする薬剤を併用することもあります。
軽症の場合には、生活習慣の改善等で自然軽快することがありますが、薬剤による治療を行うことで早く軽快しますので、かかりつけ医にご相談ください。