医学の進歩はめざましく、多くの病気が治るようになり、日本人の平均寿命は世界トップクラスを長年保っています。しかし全ての病気が治療により完全に治るわけではなく、なかには治療のため長期間入院しなければならない場合もあります。
長生きはしたい、でもそのために入院しているのではなんのために生きているのかわからない。病気で病院に通うのも難しくなってきたが、これまでと変わらぬ生活を送りたい。慣れ親しんだ地域での快適な暮らしを続けていきたい。こうした高齢者の声に応えようとするのが在宅医療、訪問診療です。
患者さんのお宅に医師が伺うことはこれまで往診と呼ばれてきました。往診は原則として患者さんの急病に対して医師が臨時に訪れることをいいます。それに対して在宅医療では、訪問診療が行われ、だいたい2週間に一度程度の頻度で定期的に医師が訪問します。
そして病状に合わせて診察、検査、処方などを行います。定期的に訪れているため患者さんのふだんの様子がわかり、より患者さんの状態にあった診療ができるメリットがあります。患者さんも自宅のリラックスした環境でいつも決まった主治医に診てもらうことで安心して医療を受けられます。
医療費節約にも役立つこともあり、政府としてもこの在宅医療を推進しています。手術などを除き、病院で行われる医療の多くが在宅でもできますし、がんを含め多くの病気がその対象になります。病院との大きな違いは、在宅は生活の場でもあるので、ケアマネージャーやヘルパーなど、高齢者の生活を支える職業の方との連携が必要になることでしょう。在宅医療では多くの職種がお互いに連絡を取り合いながら、患者さんの生活を支えています。