ストレス因子により身体の不定愁訴ふていしゅうそを訴える自立神経失調症

 ストレス因子により身体の不定愁訴を訴えて、一般の内科を訪れる代表的な病態の一つに、自律神経失調症があります。では、自律神経失調症とはどんな病気なのでしょうか。誰もがかかる病気なのでしょうか。どういうときに、どういう人がかかるのでしょうか。自律神経が失調すると人間は一体どんな病態になってしまうのでしょうか。今回は、自律神経失調症の原因について考えてみましょう。

 自律神経失調症とは、「検査をしても、その症状を裏付ける異常所見が見出されず、また器質的病変がないのに、自律神経の機能障害によって、さまざまな身体の不定愁訴を訴える状態(自律神経失調症の現在における暫定的な定義)」といえます。原因が特定できない病気と考えることもでき、いまだ病態や概念の曖昧な側面がみられます。しかし、心身両面から捉えると、自律神経失調症の発症には心と身体が密接に関連し合っており、特に現代社会における心理的・社会的ストレスの関与が発症の重要な因子となり得ることが想定されます。

 ストレス病としての自律神経失調症が増えてきているのは、現代社会がストレスの巣だからというだけでなく、現代社会がストレス耐性の弱い人を作り出していることも見逃せません。自立神経を失調させてしまうストレス要因としては、身体的・精神的・社会的なストレス要因などが挙げられます。これらのストレス要因は、患者自身が自覚している場合と、ストレスが加わっていてもそれに気づいていない場合とがあります。後者の場合は、問診でもストレスの介在が不明確な場合もあり、ストレス要因が病態の成立の重要因子でありながら、その関与が認知されていないケースもみられます。

 いずれにせよ、いわゆる自律神経失調症に関しては、診察の場でストレスの関与の有無をある程度探ることが必要といえます。