これまで消化器がん検診について3 回に分けてお伝えしてきましたが、 最後に大腸がん検診に関してお話しします。
大腸がんは、前回お伝えしたピロリ菌感染症との関連が強い胃がん、喫煙や飲酒と関連が強い食道がんとは異なります。食事の欧米化や運動不足、 肥満、加工肉の多食、飲酒といった環境因子や遺伝子要素も関連はありますが、どんな人でも罹患する可能性があり、日本では性別を問わずがん死亡率の上位を占めています。
ただし、大腸がんは比較的進行が遅いがんの一つで、出血を伴う進行がんで発見されても手術などの治療が可能なので、世界的には便潜血検査が大腸がん検診として広く採用されています。
現在、松戸市では40歳以上の人を対象に、年に一度の便潜血検査による 大腸がん検診を受けることが可能です。便潜血検査で1 回でも陽性になった人は、必ず大腸内視鏡検査による精密検査を受けてください。自分は痔があるから、便秘でよくお尻が切れるから、そのせいだと自己判断するこ とは大変危険です。
大腸がんの家族歴がある人は、便潜血検査が陰性でも40歳代に一度は内視鏡検査を受けると安心です。早期大腸がんは内視鏡治療で完治可能です。 内視鏡検査によってがんは見つからなかったとしても、大腸ポリープ(大腸腺腫)が見つかった場合は切除が望まれます。大腸がんは、大腸ポリープが成長してがん化することが多く、大腸ポリープを切除することで大腸がんの予防につながるからです。切除後も大腸ポリープは再発の可能性がありますので、定期的な内視鏡検査が推奨されています。
残念ながら、大腸ポリープや早期大腸がんの有無を便潜血検査で代用す ることはできません。アメリカでは、大腸がん内視鏡検査を導入することなどで大腸がん罹患率が減少に転じました。大腸ポリープを1 回でも切除した場合は、大腸ポリープの再発や大腸がんの発症リスクがあると考えて、 定期的な大腸内視鏡検査による検査観察をお勧めします。