科学技術や情報の発達した現代社会では、かつて考えられなかったほどのさまざまなトラブルや悩みごとが、職場や家庭内、学校、その他の地域社会の中で生じ、それが私たちの心身に強いストレスや圧迫感となっています。
心身がそのストレスや圧迫に耐えられなくなったとき、私たちの体や心には多くの『ひずみ』が生じ、放置しておくと思わぬ病気になります。その典型的なものが『うつ病』なのです。
ちなみに、ＷＨＯ（世界保健機関）の推計によると、いま、うつ病の有病率は全人口の3～5％とされています。
これをわが国にあてはめると、1年間に360万人～600万人の人たちがうつ病にかかっていることになります。このようなデータから、いま私たちの20人に一人はうつ病の経験者だと言われます。しかも、この病気になる人たちは年々増加の一途をたどっているのです。
このような意味合いから『うつ病』はまさに『現代病』と言ってもよい病気なのですが、不思議なことに、この病気になっている人たちの中では、いま自分が陥っている状態が『うつ病』である、と本人が正しくとらえている人たちは非常に少ないのです。
うつ病は気分障害
うつ病は、よく『気分障害』とも言われます。
英語では「Ｄｅｐｒｅｓｓｉｏｎ］といいますが、これは経済用語としては『不景気』をあらわす言葉です。言い換えれば、気分の不景気状態ともいうべき『抑うつ』という気分（感情）障害が基本にある病気ということになります。しかし、このような気分の障害をあらわす徴候は、私たちの普段の生活の中には数多くあります。
そこで、大部分の人たちは、普通、自分の陥っている気分障害を過労からくる一時的な気分のふさぎや、さまざまな悩みごとでもたらされた気分的な落ち込み、あるいは軽いノイローゼのようなものだと考えがちです。
実は、「気分的な落ち込み現象」こそ『うつ病』の徴候なのです。