叱(しか)ったり、励ますのは禁物
うつの治療でもう一つ重要なことは、第三者の協力と理解なのです。うつになった人が一人だけで悩み、苦しむのは、治療上のマイナスとなります。周囲の人の協力がなにより大切です。家族、親戚、友人、職場の上司、同僚の協力と理解は言うまでもありません。
心の病であるうつになった苦しみは、うつになった人でなければわからないとよく言われます。自分が健康なときと比較すると、まったく別人のようになるわけですから、その驚きと悩み、そこから抜け出せないつらさは、やはり本人のみぞ知る苦しみと申せましょう。
従って、うつ病の人と接する周囲の人々は、うつ病の苦しみを理解する態度を示し、決して無理をさせないよう、十分な配慮をしてあげることが重要です。うつで苦しんでいる人を叱ったり、励ましたりすることは禁物です。とくに状態が悪化しているときには一人にさせず、なるべく一緒にいてあげてください。
周囲の人の協力で自殺を防ぐ
自殺念慮、企図自殺、うつの人でいちばん怖いのは「自殺」です。自分のみじめさや、ふがいなさを責める気持ちが高じると、この世をはかなんで自殺をしようと思ったり、企てたりすることが少なくありません。
自殺は明け方になされることが多いものです。これは、うつの人では朝がいちばん気分のすぐれないときだからです。とくに「孤独」は自殺の危険因子の一つとなるため、明け方には一人にさせないという家族のあたたかい協力が不可欠となります。
うつは、きちんと治療さえすれば、必ずよくなる病気なのです。周りの人たちのあたたかい協力によって、前途に希望をもたせるようにしてあげたいものです。