心療内科とは、心のトラブルによって発生するからだの病気(心身症)を取り扱うのが専門領域です。心身症の実態は、りっぱなからだの病気に違いないわけですが、病気の成り立ちには、心理的・社会的ストレスが深くかかわっている点が特徴です。ですから、通常の身体医学による治療を行っても病状がさっぱり好転しない場合が多いものです。
その理由は、病気の発生に深くかかわっている心理的ストレスを考慮しないでアプローチをすると、症状の悪循環を引き起こし、心身症の病態をいっそう悪化させる因子として働くことが少なくないからです。
では、心理・社会的なストレスというのはどんなものかについて考えてみましょう。ライフ・サイクルから見てストレスを受けやすい時期があって、それはどんなときかということと、私たちの生活はいろいろな変化を毎日受けていますが、それがどのくらいのストレスになるかということです。
まず、ライフ・サイクルからのストレスについて述べます。
初めの大きなストレスというのは就学・入学の時期に起こりがちで、母親から離れて学校へ行くようになったときに分離不安が起こり、不適応の反応を生じやすいとされています。そして小学校に入ると、心身とも比較的安定した状況となり、精神分析的にもいわゆる潜伏期ということになります。とは言っても、最近では、受験勉強などに巻き込まれ、胃・十二指腸のストレス潰瘍が小学校時代に発生してきているような状況で、とても安定期とは言えないようですが・・・。
思春期・青年期においては、第二次性徴とともに、親との間で繰り広げられる依存と独立の葛藤が生じ、大きな生活上のストレスとなり、「心身症」の発生しやすい時期と言えます。
次のピークは中壮年期で、男性は社会的役割からのストレスを、また女性は家事や育児からのストレスを受けやすくなり、うつ状態や心身症様反応である自律神経失調症発生の一つのピークになっています。
退行期に入ると、体力の消耗とともに高血圧、糖尿病などの生活習慣病が顕在化し、女性では更年期というホルモンバランスの変化も起こってきます。そして老年期になってもストレス反応は続き、老化とか、身近な人の死亡、経済的な不安などさまざまな喪失体験を受けて、うつ病になりやすくなっていきます。
このように人生各期においてさまざまなストレスを受け、それに伴って生体が疲弊した状況、また、その個体の生物学的な弱点にぶつかると、心身症として病気が発生してくると言えます。