アスベスト(石綿)による健康障害
アスベスト(石綿)は、柔らかく断熱性、電気絶縁性にすぐれた特性から暖房パイプの被覆(ひふく)、自動車のブレーキ、船舶、石油プラント、建材など広く活用されてきました。
しかし、飛び散った石綿の繊維を吸い込むこと(ばく露)による健康被害が問題になっています。石綿による職業がん認定者は平成10年度の42人に対し、平成15年度は121人と3倍に増加しています。
わが国では、昭和45年から平成2年にかけて、年間30万トンを輸入し使用してきました。平成7年から、有害性の高い石綿を含有する製品の製造・使用が禁止されました。代替品のない石油プラントなどでは現在でも使われていますが、平成20年までに全面的に使用禁止予定です。
石綿の8割以上が、天井・内装材・断熱材・外壁・屋根材など建材に使用されており、今後これらの建造物の建て替えや地震などで解体される際に、石綿ばく露の危険が想定されます。
石綿ばく露を受ける機会は、鉱山や工場内、石綿製品の加工・運搬・組み立て・解体などの職業ばく露だけでなく、工場関係者の家族が作業衣を洗濯する際や、石綿工場の近隣居住者、天井などが劣化し石綿が露出した部屋や、石綿の吹き付けられている環境に長く生活している際などがあります。
健康障害としては、石綿繊維が肺に刺さって綿維化し、働きが悪くなる石綿肺が約十年後に発症します。
また、ばく露の期間や量にもよりますが、肺がん発症の危険は高くなり、喫煙が加わるとさらに10倍高くなります。中皮腫は胸膜や腹膜、心膜より発生する悪性腫瘍で、ほどんどが石綿によるものと考えられています。ばく露からおおむね20~50年後に発症します。頑固な胸痛や呼吸困難、レントゲンで胸に水がたまる、腫瘍の所見を認めます。中皮腫は潜伏期間が長いため、わが国の石綿利用が昭和40年代以降に急増していることを考えると、平成40年頃まで発症する人が増加することが予想されます。
新薬を開発中ですが、現在のところ早期に発見され切除できないと、数年以内に死に至る病です。このため石綿による健康障害の予防が大切です。
国は平成17年2月石綿障害予防規則を定め、石綿が吹き付けられている建築物の管理、石綿含有製品の計画的な代替の促進、石綿が使用されている建物の解体・修理時の届け出や作業場の隔離、放水などの飛散防止が義務付けられました。
前述の環境で生活していた人は、禁煙に心がけ、高性能のヘリカルCTなどがある病院で、定期的な検診を受けましょう。