MERS(中東呼吸器症候群)

 MERSとは、2012年にアラビア半島で発生したコロナウイルスによる、呼吸器感染症です。ヒトコブラクダが保有しているウイルスで、ラクダとの濃厚接触や人からの飛沫感染または接触感染で伝搬します。2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)も同じコロナウイルスの仲間です。

■主な流行地域

 アラビア半島を中心とした、中東地域で流行していますが、これまでに世界26カ国で感染が確認されています。

■症状と治療法

 主な症状は、発熱とせき、息切れなどの急性呼吸器症状です。下痢、嘔吐おうとなどの消化器症状を伴う場合もあります。無症状または軽症ですむ場合もありますが、高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患がある方で重症化する傾向があります。重症化した場合、致死率は約40%です。治療法は、MERSに有効な抗ウイルス薬はないので、対症療法になります。

■感染を拡大させないために

 海外との行き来が頻繁にある現代、日本においても、帰国者・入国者からの二次感染拡大防止のために、MERSが疑われる方の早期発見と診断が重要です。発熱や、急性呼吸器症状があり、以下の①~③に該当される方はMERS感染が疑われます。

①渡航地アラビア半島または流行地域に渡航していたか?
②潜伏期2~14日であり、渡航から発症まで14日以内か?
曝露歴ばくろれきラクダとの接触歴があったか?
現地で病院を受診、または入院していたか?
MERS患者と接触があったか?
 MERS疑いに該当された方は、必ずマスクを着用し、接触する人を極力少なくして下さい。早期に診断をつけるために、直ちに地域の保健所に連絡し、対応についてご相談下さい。